Lefty in the right 〜左利きに宿る鉛筆と箸とハサミ

娘は左利き

娘は4歳(本稿執筆中の2017年7月現在)で、左利きである。

彼女の利き手について、矯正するかどうかいろいろ考えたのでまとめておこうと思い立った。

始まりは鉛筆

第一次利き手論争は鉛筆から始まった。娘は自然には左手で書くことが多かったが、当初「右手で書くこと、持ち方」を指導されたため鉛筆の持ち方(後述する三点持ち)については右手の上達が良く、左手では鏡文字の頻度が高かった。

選択肢としては以下の二つを検討した。

  1. 右手に矯正する
  2. 矯正しない
  3. 書き文字のみ右手に矯正する

このうち最も優勢であった論は3の「書き文字のみ右手に矯正する」であった。根拠としては、日本語の文字は概ね右手で書く想定で書き順などが決まっており、左手で奇麗な字を書くのは困難」という通説であった。

我が家でもこれにならい、「書き文字のみ右手に矯正する」という方針が定まった。

箸の台頭

ところが、箸の習得が始まると課題が浮き彫りとなった。これを第二次利き手論争と呼ぶ。

箸については第一次利き手論争より以前、利き手がまだ判然としないうちから「箸の練習」にエジソン箸右手用を与えていた(ちなみに父は同時にエジソン箸左手用で習得の苦労を分かち合った)。つまり意図せずして「箸は右手」という指導になってしまっており「書き文字以外左手」という方針からブレてしまっていた。

さらに「箸の持ち方は鉛筆の持ち方の延長にある」という事実が注目され、問題を複雑にした。鉛筆を親指、人差し指、中指で支える「三点持ち」が、箸の上の一本を持つ持ち方につながっているのだという。

つまり、鉛筆の持ち方を左右に分けたことで、箸の持ち方にも選択肢が生じてしまった。

  1. 三点持ちの上手い右手で箸を持たせる
  2. 利き手の左手で箸を持たせる

これについては悩ましく、今なお明快な結論はない。習得の進んでいる右手を放棄すべき理由がなかったためである。

ハサミ=不器用論争

第二次利き手論争が結論出ぬまま始まった第三次利き手論争は、どこぞの幼児教育の体験模試かなんかに端を発する。カミさんが「左右に使う手を分離すると訓練に2倍の時間がかかり、結果的に不器用になる。文字以外のすべてを左手に統一する」「手始めとして、左利き用のハサミを購入し右利き用のハサミを撤廃する」と宣告したのである。

これは父にとっては驚天動地であった。それまで父の脳内には「右に矯正する」「右に矯正しない(で放置する)」の二択であって、このような「左に統一する」思想はまったくなかったためである。

危機感を覚えた父は状況の把握と情報の整理を図った。すると以下のようなことが明らかになった。

  • 体験模試の結果によれば、「娘は運動能力と手先の器用さに課題がある」
  • 不器用と利き手を結びつけて話したのは、受験対策塾の側ではなく、カミさんの方である(「不器用といえば、うちの子は左利きで……云々」)
  • 「当塾として利き手に関する統一見解はないが、個人的見解として」との前置きがあった
  • 担当者は娘の作業現場を直接見ておらず、直接見た担当者からの報告シートをもとに会話をしている
  • カミさんは自分が不器用であることにコンプレックスがあり、娘を不器用にしたくない

うーん。利き手と器用さについて結論づけるには、あまりに乱暴な情報ソースと言わざるを得ない。

私がいくつか気づいたことがある。
– 人は、自分がコンプレックスを持っていることについて、慎重であるべきだ。「自分ができなかったことを子どもにやらせたい」は往々にして間違った道をたどることになる。なぜなら、先導自身が上ったことのない山を登るからだ。「低学歴の親が子どもを高学歴にしたいので塾に猛烈に通わせる」なんてのは典型。
– 論理と実感は両輪である。論理的に言えば「箸、鉛筆を片手に集約した方が両手で分けて使うよりも器用になる」は論理的に見えるかもしれない。だが、実際、片手に集約したらよかったという意見は聞いたことがない。その乖離がなぜなのか、よく考えることこそ実践的な態度にほかならぬ。
– ある組織が重要な論題に結論を出していないのだとしたら、そこには何か理由があるのかもしれない。

もしも「片手に集約する」ことが器用になることなのだとしたら、片手を縛り上げて使わない方が良い。だがそうはならない。なぜか。

逆に「あの人手先が器用だね」と言われる人はどんな人物像だろうか。私の中では、ビーズ細工ができるとか、何かの工作物を上手に仕上げるとか、そういう人たちである。

これらを考えているうちに、私が感じている齟齬の原因に思い当たった。

器用な人は両手を使う

箸や鉛筆のような「片手アクティビティ」と、一般的器用さに必要な「両手アクティビティ」は少し違う。

「あの人手先が器用だね」と言われる人物像は、両手アクティビティの人である。

器用にしたいなら両手アクティビティを鍛えるべきなのだ。

はさみだって持ち手だけで切るわけではないのだ。紙を持っている方の手だって動いている。

器用な子供を育てたいのなら、両手鍛えていい道理である。そういうわけで、私は左利きの子供は大いに左手を使うべきだと思うし、かといって右手が必要な場面では苦労しながら右手を使うべきだと思う。

両方を使わざるを得ない状況が得られることで、器用になるのだと私は考えている。

左手用はさみを購入

カミさんが左手用はさみを買いたいというので買うことにした。

新宿の世界堂本店には学童用はさみで左手用があった。

はさみ

メーカーによっては、右手用は青赤のカラーバリエーションがあり、男女ユーザーをターゲットしているが、左手用は黄色のみでマイノリティの悲哀をにじませている。

プラスのベルヌーイカーブ刃のものを購入。

学童用はさみ 左手用

娘がいろんなことを上手にできますように。

プラス はさみ左手用 フィットカットカーブ Jr フッ素コート SC-145ML 黄 34-673

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