『パパがサーカスと行っちゃった』 エットガール キャロット, ルートゥー モエダン
「てにをは」は大事である。「パパがサーカスに行っちゃった」とはわけが違う。「パパがサーカスと行っちゃった」のである。ある意味では「パパがサーカスに行っちゃった」ではあるんだけど、その表現だとなんか「パパがサーカス観に行っちゃったので置いてきぼりをくらった僕らはカンカン」てな話になりそう。そんな生やさしいお父さんではない。
原題はより明白で『Dad Runs Away with the Circus』つまりパパはサーカスに随伴して出奔したのである。
サーカスが街に現れた、との知らせを聞くや「すっごいことがおこったぞ! わっからないだろうな~!」と叫んでシャンデリアにぶら下がり、子どもたちをたたき起こすお父さん。そして「またか」と思ってシラーッとする「ぼく」とオードリー(姉)。
子供たちはこのエキセントリック・パパに慣れきって終始冷ややかだ。この家では常識人のママが外でお仕事をしていて、非常識人のパパはどうやら主夫みたい。そして一人で毎日盛り上がってるパパにみんながうんざりしつつ大好きなのだ。良い家族ではないか。
小雨降る中、一家は自動車でサーカスに向かう(当然運転はママ)。お父さんは興奮し、車から身を乗り出してはしゃいでいる。雨に濡れると身体に悪い、という至極常識的なママの指摘に対し、パパの返事は天才的だ。
「そんなの、ライオンの口に頭を突っ込むことに比べればなんぼのもんじゃい!」
……余談だが翻訳者もなかなかいい仕事をしていると思う。「なんぼのもんじゃい」て久しぶりに聞いたわ。
サーカスを観覧してノリノリのパパがいかにしてサーカスと出奔し、そして最後どんなイケイケな結末を迎えるかは是非ご一読願いたい。もうなんか、常識を完全に超越して笑っちゃうしかない。
Wikipedia英語版によれば、作者二人はイスラエル人とのこと。英語版が2004年に、日本語版が2005年に出版されている。
Etgar Keret – Wikipedia, the free encyclopedia
Rutu Modan – Wikipedia, the free encyclopedia
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